約20万人を13年追跡した大規模研究
メンタルヘルスの問題は世界中で急増し、多くの国で重大な社会課題になっています。そんな中、食事に含まれる“ミネラル”がメンタルの健康にどれほど影響するのかを、長期間にわたって調査した興味深い研究結果が発表されました。
イギリスの大規模データベース「UKバイオバンク」の情報を利用したこの研究では、特定のミネラル摂取が、うつ病や不安障害などの発症リスクと関連することが示されています。
どんな研究?
研究を行ったのは中国・西安交通大学の研究チーム。
対象者は 初診時に精神疾患がなかった約20万人。
調査方法
- 複数回の「24時間食事アンケート」で、カルシウム、鉄、マグネシウム、亜鉛、セレン など12種類のミネル摂取量を推定
- その後 中央値13年間 追跡
- 以下6つの精神疾患の新規診断を記録
- うつ病
- 不安症
- 統合失調症
- 双極性障害
- PTSD
- 自殺(死亡記録を含む)
- 年齢・性別・BMI・喫煙・飲酒・持病など多くの要因を調整し、ミネラル摂取と精神疾患リスクの関連を分析
主な発見
研究では、ミネラルごとに次のような関連が見つかりました。
リスクが低下したミネラル
- 鉄(Iron)
→ 摂取量が最も多い人は、最も少ない人に比べ うつ病リスクが約12%低下 - マグネシウム(Magnesium)
→ うつ病リスク低減と関連 - セレン(Selenium)
→ 同じくうつ病リスクの低減 - マンガン(Manganese)
→ 自殺リスクの低下と関連 - 亜鉛(Zinc)
→ PTSDの発症リスク低下と関連
リスクが上昇したミネラル
- カルシウム(Calcium)
→ 摂取量が多い人は、- うつ病リスク:10%増加
- 不安症リスク:15%増加
関係が見られなかったミネラル
- 統合失調症
- 双極性障害
については、12種類のどのミネラルとも有意な関連なし。
性別・年齢による違いも
分析を進めたところ、以下の傾向も判明。
- 女性では、鉄・カリウム・マグネシウム・亜鉛・セレンの「うつ病予防的な関連」がより強く見られた
- 55歳以下では、カリウム・マグネシウム・銅などによるリスク低下効果がより顕著
つまり、栄養の影響は性別や年齢によっても変わりうるということです。
“健康な人だけ”で分析すると結果が弱まる場面も
研究者が、慢性疾患のある人を除いてもう一度分析を行ったところ、
- カルシウムとうつ病の関連
- いくつかのミネラルと不安症の関連
などが弱まる結果に。
これは、持病の有無や全体的な健康状態も、ミネラルとメンタルヘルスの関係に影響している可能性を示しています。
この研究の限界点
- 因果関係は証明できない(観察研究のため)
→ ミネラル摂取が直接メンタル疾患を「引き起こす」「防ぐ」と断定はできない - 食事内容は自己申告であること
- 調査対象の大半が 白人系・比較的健康的な人 で、一般化には注意が必要
まとめ:バランスの良い食事がメンタルにも重要
今回の大規模研究は、ミネラルとメンタルヘルスの間に「明確な関連」があることを示しました。
特に、鉄・マグネシウム・セレン・亜鉛などの不足はリスク増と関係し、逆にカルシウムの過剰摂取も注意が必要かもしれません。
ただし、
“特定のミネラルだけを増やせば良い”という単純な話ではない
と研究者は強調しています。
最も重要なのは、
多様なミネラルをバランスよく摂る食生活が、メンタルの健康にも影響する可能性があるという点です。
今後は、より多様な人種や地域での研究、そしてミネラルが脳の働きにどう影響するのかというメカニズムの解明が期待されています。
出典:psypost「New study finds links between dietary mineral intake and mental health risk」
New study finds links between dietary mineral intake and mental health risk
