出典:psypost「Learning via ChatGPT leads to shallower knowledge than using Google search, study finds」
2022年の終わりにChatGPTのリリース以降、多くの人が大規模言語モデル(LLM)を使って「質問→答え」の形で知識を得るようになりました。その手軽さは確かに魅力的。「手早く情報をまとめてくれる」ことで、努力をかけずに学べるように感じられます。
しかし、新たな論文(7つの実験・1万人以上の参加者を含む)が示すところによると、こうした「手軽さ」には代償があるようです。
LLMを使って学んだ人たちは、標準のウェブ検索(たとえばGoogle検索)で情報を自分で探す人たちに比べて、そのトピックを深く理解しづらくなるというのです。
研究の流れ
研究者たちは、参加者に「あるテーマについて学ぶ」よう指示し、次のようにランダムに分けました:
- LLM(ChatGPTなど)を使って学ぶグループ
- 従来型のウェブ検索で自分で情報を探すグループ
どちらのグループも、好きなように調べたり、質問を繰り返したりできました。検索やAI利用に制限はありません。
学習後、参加者には「学んだ内容をもとに友人にアドバイスを書く」という課題を出されました。
結果:LLM → 浅めの理解、一般的で浅いアドバイス
分析の結果、以下の傾向が一貫して見られました。
- LLMで学んだ人のアドバイスは、短く、事実が少なく、一般的・ありふれた内容になりがち
- そのアドバイスを、どちらの手段で調べたか知らない別の読者に見せたところ、
ウェブ検索グループの内容のほうが「ためになる」「役に立つ」と評価されやすかった
さらに、情報の出どころや事実の数が同じになるよう条件を整えた実験でも、LLMだけを使った場合はやはり理解が浅くなったという結果が出ました。つまり、差は“情報の中身”ではなく、“調べ方”にあると考えられます。
なぜこうなるのか?――「考えるプロセス」が大事
この研究の著者たちは、「学びは“能動的な思考”によって深くなる」という考えの重要性を強調しています。ウェブ検索では、自分で複数の情報源を読み比べ、信頼性を判断し、情報を統合する必要があります。この「摩擦」が、知識を深めるための思考と記憶の定着を促すのです。
一方、LLMはそのプロセスをすべて代行してしまうため、私たちの脳は“読む → 考える → 組み立てる”というステップを飛ばしやすくなります。結果として、表面的な理解にとどまりやすい、というのが研究者たちの主張です。
ただし、“LLM = 悪”ではない
著者らは、LLMのメリットも認めています。
「すばやく事実を知りたい」「概要だけさっと把握したい」という目的には、LLMは非常に便利で有用。完全に否定されるものではありません。
しかし、もし「深く理解したい」「応用できる知識を得たい」「クリティカルに考えたい」という目的があるなら、
LLMだけに頼らず、自分で情報を探すプロセスを残すことが大切だ、と研究者たちは言います。

