朝の「薄暗い光」が健康な人のうつ病マーカーを誘発する研究結果

私たちは、現代生活のほとんどを屋内で過ごしています。しかし、ベルリンの研究者らが発表した最新の研究は、特に午前中の「薄暗い照明」が、健康な成人の体内でも、うつ病患者に見られる生物学的変化(バイオマーカー)を引き起こす可能性を示唆しています。

この現象は、研究者らが提唱する「生物学的暗闇の中で生きる(Living in Biological Darkness)」という概念に基づいています。体内時計を正しく機能させるには、朝に強い光の信号が必要なのです。

     


出典:psypost「NDim morning light triggers biological markers of depression in healthy adults


疲弊のメカニズム:ホルモンと睡眠の乱れ

研究チームは、健康な若年成人20名を対象に、午前中(午前8時〜正午)の光の強度を比較する実験を行いました。

  • 薄暗いグループ: 55ルクスの低強度・白熱灯(薄暗いリビングや質の悪いオフィスを再現)
  • 明るいグループ: 800ルクスの高強度・蛍光灯(明るいオフィスや教室を再現)

その結果、薄暗いグループにのみ、うつ病患者に共通する以下の2つの重要な変化が確認されました。

 

ストレスホルモン「コルチゾール」の異常な上昇

通常、コルチゾール(ストレスホルモン)は朝にピークを迎え、夕方にかけて減少します。しかし、薄暗いグループでは、コルチゾールレベルが夕方に異常に高い状態を維持しました。

  • これは、体が休息モードへ移行するためのリズムが乱れていることを示しており、うつ病患者によく見られる特徴です。
  • 「深い睡眠」の質の低下と遅延

薄暗いグループは、睡眠時間が平均で約25分短縮しただけでなく、睡眠の構造そのものが悪化しました。

  • 最も回復力の高い深い睡眠(徐波睡眠)が、夜の前半ではなく、後半にずれる傾向が見られました。これもまた、うつ病患者の睡眠構造で知られる特徴です。

 


結論:現代生活と生物学の「不一致」

この研究結果は、健康な人であっても、朝に十分な光の信号がないと、体内で気分障害への脆弱性を示す生理的な変化が始まることを意味します。研究者らは、わずか5日間の薄暗い光の暴露で、「うつ病患者の生理状態を模倣し始めている」と指摘しています。

 

実生活への示唆

  • 予防策としての明るい照明: 職場の照明や自宅のレイアウトを見直し、午前中の光の強度を上げることが、最もシンプルで効果的な予防策となり得ます。
  • 青い光の重要性: 概日リズムを司る脳の「マスタークロック」は、特に青い光の波長に反応します。白熱灯(薄暗いグループで使用)は青い光が少ないため、朝の信号として機能しにくいことが原因とされています。

この研究は、現代の建物やオフィスにおける一般的な照明レベルが、実は生物学的な健康には不十分である可能性を強く示唆しています。朝の光を意識的に取り入れることが、心の健康を守る上で重要です。

 

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