寝すぎは本当に健康に悪いの?

メンタル

ニュース記事やSNSでは常に「もっと寝ましょう」と言われています。
睡眠不足が脳や心臓、全身の健康に良くないことは、もう聞き飽きているかもしれません。肌や性欲にまで影響するとも言われています。

では、「寝すぎ」はどうでしょうか?
9時間以上眠ると、睡眠不足より体に悪いかもしれないという最近の報告を目にすると、不安になる人もいるでしょう。

いったい私たちはどれくらい眠ればいいのか?
そして「たくさん寝る」ということは、どんな健康状態を示しているのでしょうか?


ここでは最新の研究をもとに解説していきます。


■ 睡眠は健康に欠かせないもの

栄養や運動と並んで、睡眠は健康の柱のひとつです。

睡眠中には、私たちが日中うまく活動できるようにするための生理的プロセスが進行します。
・筋肉の回復
・記憶の定着
・感情のコントロール
といった重要な機能が睡眠によって支えられています。

オーストラリアの非営利団体「Sleep Health Foundation」は、成人は1晩に7~9時間の睡眠を推奨しています。

人によっては、生まれつき短時間睡眠でも問題なく過ごせる人もいますが、多くの人にとって7時間未満の睡眠は悪影響があります。

● 短期的な悪影響
・翌日にエネルギーが出ない
・気分が悪い
・ストレスが増える
・仕事や勉強に集中しづらい

● 長期的な悪影響
・心臓発作や脳卒中などの心血管疾患
・2型糖尿病などの代謝疾患
・うつ病・不安症
・がん
・死亡リスク

つまり、「寝不足が体に悪い」のは明らかです。
では、寝すぎはどうでしょうか?


■ 寝すぎは体に悪いのか?

最近の研究では、79件の研究データをレビューし、睡眠時間と健康リスクの全体的な傾向を調べました。

結果は以下のとおりです。

● 7時間未満の睡眠

→ 7~8時間寝る人より14%死亡リスクが高い
(これは睡眠不足のリスクを考えれば納得)

● 9時間以上の睡眠

→ 7~8時間睡眠の人より34%死亡リスクが高い

2018年に発表された類似研究でも、
9時間以上の睡眠は14%死亡リスク増という結果が出ており、今回も同じ傾向でした。

また、寝すぎは
・うつ病
・慢性痛
・体重増加
・代謝異常
などとも関連があると報告されています。

これだけ聞くと、かなり不安になるかもしれません。

しかし大事なのは、

寝すぎが“原因”とは限らない
という点です。


■ なぜ「寝すぎ」と「健康問題」が関連するのか?

寝すぎているように見える人が、実際には以下の要因を抱えているケースが多いのです。

● 1. 慢性疾患があると睡眠時間が長くなりやすい

体が回復のために休息を必要としていたり、
症状や薬の副作用でベッドにいる時間が増えることがあります。

● 2. 睡眠の“質”が悪いため、長時間寝てしまう

寝ても深く眠れていないため、必要以上に寝ようとしてしまうことがあります。

● 3. 不健康な生活習慣とも関連

喫煙や肥満など、健康リスクの高い習慣は睡眠の質を落としやすく、
その影響で睡眠時間が延びる場合があります。

つまり、

「寝すぎるから不健康になる」ではなく、
「不健康だから寝すぎてしまう」可能性が高い

ということです。


■ 最適な睡眠時間とは?

人がどれくらい眠るかは、個人差が大きく、まだ完全には分かっていません。

● 年齢による違い

10代:8~10時間が推奨(大人より多い)
高齢者:布団にいる時間は長くなるが、必要な睡眠時間は若い頃と基本同じ

● 大人は7~9時間

多くの成人にとって、この範囲が健康的とされています。

また、重要なのは「量」だけではありません。

睡眠の“質”と、就寝時間・起床時間の規則性も同じくらい大事

です。


■ 結論:心配すべきは「寝すぎ」より「寝不足」

多くの大人が推奨睡眠時間を満たしていない現状では、
まずは十分な睡眠を確保することが最優先です。

良い睡眠のためには:

・日中は日光を浴び、体を動かす
・寝る時間と起きる時間を一定にする
・寝る1時間前はスマホやPCを控える
・寝室は「静か・暗い・快適」にする

もし「いつもより明らかに長く寝てしまう」状況が続くなら、
体からのサインの可能性もあります。

睡眠に困っている場合は、かかりつけ医に相談するか、
Sleep Health Foundation の情報を参照するのも良いでしょう。

 

出典:psypost「Is sleeping too much actually bad for your health?」
Is sleeping too much actually bad for your health?